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永瀬清子さんの「あけがたにくる人よ」- 4 -(対話バージョン)


M:前回は、「朗読をしましょう。自分の身体を使って、ながこさんと同じ体験を試みましょう」とお話しして、レッスンを終えましたね。


Y:はい。ながこさんを深く理解するためには、「頭で推察、身体で体験」と教わりました♪


M:よく覚えていてくださって、うれしいです(^^)

朗読するとは…頭プラス身体も使ってみようという感じです🎶


Y:ながこさんの体験と同じ体験を試みるんですよね。


M:そう。ながこさんと同じ体験を試みているつもりだったのに、実際には、同じ体験ではなかった!と気づく段階です(^^♪


Y:えっ、それはショックかも…


M:そんなに簡単に、ながこさんの体験がわかると思うのは、いささか傲慢かもしれませんよ〜。ショックを受ける必要はまったくなし!


Y:なるほど。たしかにそうですね。


M:そうでしょう?

自分から生まれる言葉によって、「わたしはこんな体験をしているんだ!」と、自分の体験を理解しましょう。すると、ながこさんの体験を、より繊細な感度で理解できますよ。


Y:ながこさんの体験が、明確になるということですね。


M:その通りです。朗読すると、すなわち身体を使って体験すると、ながこさんの体験と自分の体験のズレがわかります。違いがわかったうえで、少しずつ近づいていく。少しずつ仲良くなっていく。これが本当に大事なこと(^^)


Y:焦ってはダメなんですね。


M:百合子さんも、ろくに自分のことを知らない人が、「百合子さんのことはわかっています」って言ったら…イヤでしょう?


Y:たしかにそうですね。ちゃんと時間とエネルギーを使って、わたしのことを知ってからにしてほしいと思います。


M:ながこさんだってきっと同じだと思います。


Y:よくわかりました。ながこさんとゆっくり仲良くなることが、読むということなんですね。


M:そうだと思います。

さて。ながこさんと同じ体験をするには、ながこさんになりきること。

まずは、かつて恋した相手「あなた」が、あけがた登場した日に遡りましょうね。少なくとも3ヶ月くらい前でしょうか。そして、週に何度か現れるその人を「あけがたにくる人」と名づける体験もしてくださいね。


Y:はい。ながこさんからこの語りが生まれた当日も、「あけがたにくる人」が現れて、その時ながこさんは、気が向いて呼びかけてみたんです…。

それでは、ながこさん体験をいたします!


あけがたにくる人よ

ててっぽっぽうの鳴く方から


M:「ててっぽっぽうの鳴く方」という言葉が生まれる体験をしている百合子さんと、「ててっぽっぽうの声のする方」という言葉が生まれる体験をしているながこさん。


Y:あ、間違えましたね。


M:間違えていいんです。というか…「間違い」と捉えないでくださいね。ながこさんと百合子さんの「違い」です。違う人間なのだから、違っていて当たり前です。


Y:違っていいんですね。


M:違うほうがいいんです!その違いを埋めていくエネルギーや時間が尊い!


Y:なるほど。その違いを埋めていくって…具体的にどのようにすれば良いのでしょう?


M:言葉のズレから体験のズレを推察してみましょう。

百合子さんは、ててっぽっぽう…すなわち山鳩の姿を見ていませんか?


Y:見ています。山鳩が鳴いている姿を、想像の目で見ていました。


M:やはりそうですね。ながこさんは、山鳩の姿を見ていないのではないでしょうか。ただ、「ててっぽっぽうの声」すなわち音を聞いているように感じるのだけれど。


Y:ああ、そうですね。音だけ聞くと、「ててっの声のする方」という言葉が生まれると思います。もう一度、ながこさん体験を試みますね。


あけがたにくる人よ

ててっぽっぽうの声の聞こえる方から


M:百合子さん、ナイスです!「ててっぽっぽうの声のする方」という言葉が生まれる体験と、「ててっぽっぽうの声の聞こえる方」という言葉が生まれる体験の違いを考える機会が生まれましたよ〜。


Y:あ、また違う体験をしているんですね⁈


M:おおまかなところでは同じ体験です。同じと言っても、些細な違いはあって当然。あったほうがラッキーですよ。それを見つけると、ながこさんの体験を、より繊細に、より的確に、理解することができますからね!


Y:なるほど。わたしとながこさん、体験の違いって…何かしら。


M:焦らずに、ゆっくり、のんびり考えましょうね。問いは、思考を誘ってくれます。わたしたちの脳は、どんどん耕されますよ。


Y:ながこさんに対する理解が深まるチャンスですものね。ラッキーと思って愉しみます。


あ、わかったかも。

わたしは、“自分が聞いている”ということを意識していました。“聞いている自分”を意識している感じです。それに対して、ながこさんは、聞いているながこさん自身を意識していないのかも…。


M:そうかもしれませんね。ながこさんは、聞いているという意識から自由かも。


Y:はい。聞こうとして聞いて聞こえるのと、気がついたら聞こえてるのとは、ずいぶん違う体験のように感じます。


M:そうですね。ててっぽっぽうの声が耳にふっと入ってきた感覚を、ながこさんは持っているのかもしれませんね。


Y:なるほど。こんなふうに、だんだんと、ながこさん体験をしやすくなってくるんですね…


M:そうです。コツコツと少しずつ、ながこさんとの距離を縮めて仲良くなっていきましょうね。では、どうぞ。


Y:あけがたにくる人よ

ててっぽっぽうの声のする方から

しずかにしずかにくる人よ


M:ながこさんは、「ててっぽっぽうの声のする方から」と語ったときに、彼の動きの起点を感じて、それと同時に、動きの終点…すなわち、どこへくるのかを、強く意識したようですよ。


Y:わたし、彼のことだけ目で追ってました。ながこさんは、自分を意識してるんだ…

だから、「私の所へ」という言葉が生まれるんですものね。


M:ながこさんと自分との違いを知るのって面白いでしょう?違いがわかったから、その違いが、ながこさんに対する理解を深めてくれますね。ながこさんに近づいていきますよ。


Y:はい。やってみます♪


あけがたにくる人よ

ててっぽっぽうの声のする方から

私の所へしずかにくる人よ


M:ながこさんは、いまの百合子さんの体験よりももっとしずけさを感じているのかもしれませんね。それか…彼を見て感じている時間の長さが長いのかもしれません。「しずかにしずかに」と繰り返してる…


Y:しずけさと、時間の長さ。たしかにもっと感じる余地がありました!感じてみます♪


あけがたにくる人よ

ててっぽっぽうの声のする方から

私の所へしずかにしずかにくる人よ


あー、次はなんでしたっけ?


M:言葉を思い出すのではないですよ!ながこさんの体験を思い出しましょう(^^♪


(続く→)

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